TRIO KT-900 (8号機) が到着!
2024年6月10日、埼玉県入間市の H さんより、
TRIO KT-900
の修理依頼品が到着しました。
この写真は照明を LED 化した後です。
ウォームホワイト色を使ったので、LED 化したことがわからないと思います。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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昔、初めて買った FM チューナが KT-900 で、その傑出したデザインを再び眺めたいと程度の良いものを入手しました。
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フロントパネルの状態は良好で、この機種によくある段重ねして内部タブが割れる症状もないです。
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外観はとても良い機体なので長く手元に置きたいと思っています。
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最初から不安定な部分がありましたがここにきていよいよ状態が悪くなりました。
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IF WIDE の時、同調してもシグナル表示が赤色のままで音が出ません。
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IF NARROW にするとシグナル表示が緑色に変わり受信できますが基本不安定です。
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放送局によっては問題ない事もあります。
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同調後各インジケータが点滅する場合があります。
通電後暫くすると安定します。
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照明を LED 化する改造をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [20800678] で、電源コードの製造マーキングより [1981年製造品] とわかりました。
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純正ではない ONKYO の [AM ループアンテナ] が添付されていました。
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天板に小キズはありますが、全体的には綺麗な状態です。
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フロントパネルはかなり綺麗で、透明ガラス内も綺麗です。
リアパネルは綺麗です RCA 端子には輝きがあります。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源 ON でき、ランプ切れはないです。
操作スイッチも正常に反応します。
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FM 受信
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当方のアンテナレベル 84dBf の環境では、[STEREO] ランプが点灯して、音も出て良好に受信できました。
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周波数ズレは精度内 (±0.1MHz 以内) に入っており、良好です。
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[REC CAL] スイッチを ON にすると正常にテスト音が出ます。
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以上より特に問題なさそうなので SSG (標準信号発生装置) を使って動作チェックしてみました。
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S メータが赤色の状態はミューティングがかかっていることを示しており、この時は音が出ないのが正解です。
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この時に [MODE] スイッチで MUTING OFF (MONO) にすると音が出るので、動作は正常です。
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アンテナ入力が 40dBuV (51dBf) あれば S メータが緑色表示になって [STEREO] ランプも点灯して音が出ます。
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IF BAND が WIDE/NARROW いずれでも同じです。
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SSG で診る限り問題はなさそうです。
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修理依頼者宅で S メータが赤色になって音が出ないというのは、単純にアンテナレベルが低いと思われます。
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アンテナレベルが低い原因はこちらではわかりませんが、可能性として [アンテナのレベルがそもそも低い] [アンテナ以降の分配器や配線に問題がある] が考えられます。
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AM 受信
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特に問題なく良好に受信できます。
感度も良さそうです。
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カバーを開けてチェック
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内部に埃の堆積はほぼ無く綺麗です。
基板も綺麗です。
目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):照明 LED 化 ・・・ 修理依頼者の要求
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概要
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KT-900 でフィラメントランプが使われているのは [ダイヤル照明] [ダイヤル指針] です。
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上記以外は既に LED になっています。
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使用する LED
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左の写真のウォームホワイト高輝度テープ LED を [ダイヤル照明] に使います。
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LED はフィラメントランプと違って正面にしか光が出ません。
しかも取付場所は非常に狭いのです。
テープ LED が正解です。
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テープ LED は単位ごとに切って使えます。
単位ごとに LED×3個 です。
テープ幅は 10mm です。
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右の写真の 3mm 砲弾型ウォームホワイト高輝度 14400mcd LED を [ダイヤル指針] に使います。

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LED 照明回路
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右の回路で [ダイヤル照明] [ダイヤル指針] を LED 化します。
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LED は DC 駆動する必要があり、[チューナ基板] の [27] 端子より電源を取ります。
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取り出す電流は 5.3mA と僅かなので KT-900 の動作に影響はありません。
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テープ LED は 8V 以上あれば発光します。
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[27] 端子の電圧が 23V あるので、1単位のものを2個直列にします。
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LED 実装作業
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左の写真はオリジナルのダイヤル照明ランプの実装状態です。
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ランプ交換するまでにフロントパネルをここまでバラバラにする必要があって超大変です。
設計不良じゃないかと思えるくらい。
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フィラメントランプ×2個とその配線を全部除去しました。
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右の写真はこれから取り付けるテープ LED で、事前に写真のように加工しました。

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左の写真は取付が終わったテープ LED です。
G17 ボンドで接着するので、乾くまで次の作業に移れず時間がかかりました。
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右の写真は取付が終わった指針 LED です。
LED は正面にしか光が出ないので、リード足を加工して指針に向くようにしました。

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左の写真のように、電源トランスの近くで電流制限抵抗の [3.3kΩ] [15kΩ] を取り付けています。
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この抵抗を交換することで輝度を増減することができます。
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右の写真は、これまで実装されていたフィラメント麦球です。

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LED 化完成
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ウォームホワイト色 (電球色) LED を使ったので元の雰囲気はそのまま残っています。
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黙っておれば、LED にしていることに気付かないと思います。
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ただし、フィラメントランプの時より [明るく] [スッキリ] [ハッキリ] の美しい表示なりました。
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フィラメントランプの時は照明で 2.8W 電力消費していましたが、LED では
0.08W 以下
と激減しました。
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安くなった電気代で、今回の改造費は回収できますよ!
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また、消費電力の減少でケース内部の温度上昇が防げるので、機器の信頼性が上がります。

リペア (その2) ・・・ 特に何もしませんでした
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IF WIDE の時、同調してもシグナル表示が赤色のままで音が出ない ・・・ 修理依頼者より
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修理依頼者宅のアンテナの問題と思われ、特に問題はなかったです。
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同調後各インジケータが点滅する場合があった ・・・ 修理依頼者より
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再現性がなく不明です。
現象が再現しないとどこを調べてよいかわからず、修理困難です。
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不具合が頻発するようになったら再度修理依頼をお願いします。
再調整
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電圧チェック
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以下のように正常です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| J83 |
+14V |
+13.5V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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FM フロントエンドの調整ズレはほぼありませんでした。
割と最近に再調整されていると思います。
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2nd IF 周波数と MPX VCO 周波数が少しズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率は以下のような良好な値に調整できました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
56 |
58 |
dB |
| NARROW |
53 |
53 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.079 |
% |
| stereo |
0.10 |
% |
| NARROW |
mono |
0.12 |
% |
| stereo |
0.12 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-73 |
-71 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.55 |
dB |
| REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
445.3 |
Hz |
| -6.9 |
dB |
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AM 受信部
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添付された [AM ループアンテナ] で最高感度になるよう再調整しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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ウォームホワイト色 LED を使って実施した照明 LED 化は正解です。
美しいです。
ランプ切れの心配はほぼなくなります。
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測定器で診断して特に不具合はなく、修理はしていません。
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結局、再調整だけを実施して良好な性能と高音質を確認できました。
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デザイン
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デザインと操作性が良いチューナです。
前面のプラスチック部分がアルミ材であったなら、もっとよくなるのですが ・・・
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最前面は強化ガラス、同調ノブは直径 41mm の無垢アルミと質感あります。
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軽快でよく考えられた優れたオペレーション
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S メータは 7 レベルのバー表示、T メータは [→ ←] の表示で、操作フィーリングが良いです。
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感度や音質
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FM は TRIO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
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やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
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AM はそこそこ感度が高いです。
音質は AM なりに良いです。