TRIO KT-9900 (6号機) が到着
2026年6月11日、石川県能美市の K さんから
TRIO KT-9900
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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動作はしていますが「音質がイマイチ」「音の広がりがない」と感じています。
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中古品で買った時から大量に電解コンデンサが交換されていました。
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再調整等のメンテナンスをお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [850430] で、電源コードに製造マーキングより [1979年製造品] とわかりました。
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僅かなスレなどはありますが、全体的にかなり綺麗な逸品です。
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リアパネルの RCA 端子に少しサビが出ています。
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底板にある4個の足が純正ではないです。
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純正の足はアルミ材も使われた高級品ですが、なぜかプラスチックの安物の足に交換されています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ランプ切れはないです。
操作スイッチは正常に反応します。
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[TUNING] ノブで同調操作すると、{T メータ] がセンタに近付くと [DDL] ランプが点灯したままになります。
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これ、オカシイです。
[TUNING] ノブはタッチセンサを兼ねており、手が触れている時は [DDL] ランプは消灯が正しいです。
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タッチセンサ回路周りが故障しています。
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[T メータ] をセンタに合わせて同調しても、じわりじわりと指針が左側にズレてきます。
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FM 同調点の調整がズレているのと、タッチセンサ故障が要因と思います。
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[S メータ] の振れを信じると 10dBf 以上の感度落ちがあります。
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[D メータ] [M メータ] は正しく振れます。
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[STEREO] ランプが点灯して放送が受信できますが、[T メータ] がズレてくるので正常に受信しているか確信が持てません。
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周波数ズレ ±0.1MHz 以内に入っており正常そうですが、これも [T メータ] がズレてくるので確信が持てません。
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修理依頼者が「音質がイマイチ」「音の広がりがない」と言っているので、現状の性能値を測定してみました。
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ステレオセパレーションが安物チューナ並みの性能になっています。
修理依頼者が音が変と感じた原因です。
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その他の数値は良いと言うことはないですが、そう問題ないです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
28 |
31 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.030 |
% |
| stereo |
0.030 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-45 |
-50 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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筐体内は非常に綺麗です。
基板は綺麗で目視で劣化とわかる部品はありません。
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電解コンデンサが大量に交換されています。
[PS 基板] は 100%、この他の基板は基板ごとに数個~数10程度の交換となっていました。
リペア (その1):タッチセンサの動作不具合
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概要
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[TUNING] ノブはタッチセンサを兼用しており、手がノブに振れていると [DDL] ランプ消灯が正しいです。
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ところが、本機は放送局が見つかり同調範囲に入ると [TUNING] ノブに手が触れているにも関わらず [DDL] ランプが点灯します。
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この状態では AFC がかかり放しになるので、歪が最小となる正しい周波数に合わせるのが困難となります。
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調査と原因
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下の回路図はタッチセンサ周りです。
[TUNING] ノブに手を触れている/いないを検出します。
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[IC3] の 8pin はタッチ検出/非検出に関わらず +14V のままです。
これがオカシイです。
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タッチ検出 (ノブに手が触れている) で 0V、タッチ非検出 (ノブに手を触れていない) で +14V と変化するのが正しいです。
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[IC3] の 9pin は正常に変化しています。
こうなると [IC3] 故障確定です。

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修理
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以下の交換リストのように IC ソケット化して交換しました。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| SW 基板 |
IC3 |
TC4069UBP |
TC4069UBP IC ソケット化して交換 |
CMOS HEX INVERTER |
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左の写真は交換後で、新しい [TC4069BUP] を IC ソケットに実装しました。
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右の写真は交換前に基板に実装されていた故障した [TC4069BUP] です。
足は真っ黒になっておらず、マイグレーションによる故障ではないです。

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修理後の動作チェック
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[DDL] ランプが点灯している状態で [TUNING] ノブに手を触れると、瞬時に [DDL] ランプが消灯します。
AFC が OFF になります。
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この状態で [TUNING] ノブから手を放すと、数秒後に [DDL] ランプが点灯します。
AFC が ON になります。
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正常な動作です。
直りました。
リペア (その2):その他
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リアパネルの RCA 端子に少しサビが出ている
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ピカール液
でマイクロ研磨してサビを落としました。
かなりマシになりました。
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[T メータ] をセンタに合わせて同調しても、じわりじわりと指針が左側にズレてくる
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タッチセンサの故障修理と FM 同調点の再調整で直りました。
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[S メータ] の振れを信じると 10dBf 以上の感度落ちがある
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[S メータ] を dBf で再校正して直りました。
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誰かが間違って dBuV で校正したのだと思います。
KT-9900 の [S メータ] は dBf が正しいです。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| [PS 基板] 8pin |
+22.5V |
+22.8V |
〇 |
| [PS 基板] 9pin |
+18V |
+18.1V |
〇 |
| [PS 基板] 10pin |
-18V |
-18.5V |
〇 |
| [PS 基板] 11pin |
+15V |
+15.5V |
〇 |
| [PS 基板] 14pin |
-15V |
-15.4V |
〇 |
| [PS 基板] 15pin |
-14V |
-14.5V |
〇 |
| [PS 基板] 19pin |
+14V |
+14.5V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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FM フロントエンドのトラッキング調整で感度が少し上がりました。
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到着時にガタガタだったステレオセパレーションは大きく改善しました。
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この結果、音の解像度が上がり、聞き惚れる素晴らしい音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
62 |
62 |
dB |
| NORMAL |
61 |
61 |
dB |
| NARROW |
58 |
58 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.027 |
% |
| stereo |
0.027 |
% |
| NORMAL |
mono |
0.030 |
% |
| stereo |
0.031 |
% |
| NARROW |
mono |
0.075 |
% |
| stereo |
0.080 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-74 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.03 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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動作品と聞いていたので調整だけかな?楽勝かな?と思っていました。
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ところが故障していました。
この機種をよく知らないと故障と認識できなかったのだと思います。
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修理が終わって、やはり KT-9900 は良い音だと思います。
ずっと聴き続けていたい素晴らしい音です。
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デザイン
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ともかく大きくて重いです。
15kg もあります。
アンプより重いです。
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フロントパネルは 5.3mm の分厚いアルミ材で高級感あります。
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ダイヤルとメータに照明があって、ON すると浮き上がって素敵です。
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チューニングノブは直径 50mm のアルミ材で高級感あります。
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チューニングノブでダイヤル指針は、高級感のある動きをします。
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最前面の透明パネルと内部の周波数パネルがガラスでできています。
このため透明度が高く高級感バッチリです。
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[IF BAND] スイッチはできるだけ [WIDE] ポジションで使ったほうがよいです。
KT-9900 の最高音質で放送が聴けます。
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[QUIETING CONTROL] スイッチの [AUTO] ポジションの実体はステレオ時のオートハイブレンドです。
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高域のホワイトノイズは減りますが、代わりにセパレーションが悪化するので、できるだけ使わないほうがよいです。
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オートハイブレンドしない [STEREO] ポジションがお奨めです。
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感度や音質
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感度は良好で、妨害電波排除能力も優れています。
ともかく安定感があるというか、さすが高級機です。
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ウットリ聴き惚れてしまうほうどの高音質!
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スッキリ爽快な誇張のないクリアな音質です。
ナチュラルサウンドという感じする素敵な音です。
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音に解像度があって、ハーモニーもしっかり再生します。
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特に金属音のキラキラという音がリアルです。
癖になります。
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放送局のモニタ機として測定器代わりに使えるほどのクセない超高音質です。