Victor FX-711 (11号機) が到着
2025年9月10日、静岡県島田市の T さんより、
Victor FX-711
の修理依頼品が到着しました。
オークションでメンテナンス済み品を購入されたとのことでしたが、トンデモナイ品物でした。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
オークションでメンテンス済み品を購入しましたが不具合がありました。
-
定期的にガサガサ音 (遠方でカミナリが発生時に乗るノイズの様な?) が聞こえます。
-
出品者
に連絡しても無視されて返答がもらえません。
-
オークション出品者の整備内容です。
- FM フロントエンド部トリマーコンデンサー交換
- RF 部トラッキング調整
- FM 同調点調整
- 歪調整
- パイロット信号キャンセル調整
- ステレオセパレーション調整
- 電解コンデンサー交換
- メモリー用二重電解コンデンサー交換
- トリマコンデンサー交換
- 筐体カバーを艶消しブラックで再塗装
-
純正ではありませんが、[aiwa 製 AM アンテナ] を添付しましたのでこのアンテナで AM 調整をお願い致します。
-
外観
-
製造シールが剥がれており製造シリアル番号は不明です。
-
純正ではない右の写真の [aiwa 製 AM ループアンテナ] が添付されていました。
-
フロントパネルの正面は綺麗ですが、天板への折り返しエッジに所々キズがあります。
-
リアパネルは綺麗で端子類には少し輝きが残っています。
-
天板は再塗装されているようで綺麗ですが左奥に少しヘコミがあります。
-
底板は問題ないです。
-
電源 ON してチェック
-
電源は問題なく ON できました。
FL 表示管の輝度は新品同様です。
各種ボタンは正常に反応します。
-
FM 受信
-
[STEREO] 表示が出て受信できましたが、しばらくするとバリバリという雑音が入りました。
-
この時に S メータのレベル表示も落ち込み、[STEREO] 表示もチラつきます。
-
現象より、[フロントエンド周り] [VT 電圧周り] いずれかの不具合の気がします。
-
AM 受信
-
添付された [aiwa 製 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
-
このアンテナと FX-711 の相性は良さそうで、感度良く受信できました。
-
カバーを開けてチェック
-
内部はは非常に綺麗です。
目視で問題がありそうな部品は見当たりません。
-
使用 IC のロット番号より本機は [1987年製造品] とわかりました。
リペア (その1):FM 受信でバリバリ雑音が出る
-
調査と原因
-
発生頻度は1時間に数回と低いですが、発生すると1分くらい継続することがあります。
-
普通に考えて OSC トリマコンデンサの劣化です。
-
でも、修理依頼者のコメントでは「トリマコンデンサ交換済み」となっており悩みます。
-
念のためと思って OSC トリマコンデンサをハンマリングしたらガサゴソという雑音が出ました。
-
こうなるとやはりトリマコンデンサの劣化です。
-
もしやと思って残りの RF 側のトリマコンデンサもチェックしてみましたが、全部劣化していました。
-
原因はトリマコンデンサと判明しましたが腑に落ちません。
修理依頼者に確認してみました。
-
いつ頃入手された個体ですか? ・・・ 今年の7月に落札しました。
-
こうなると、現実にはトリマコンデンサが劣化しているので、次の2つしか考えられません。
-
オークションの出品者が10年以上前に購入した本機を出品した。
オークションの出品者がメンテナンスした訳ではない。
-
トリマコンデンサ交換に相当古い在庫品 (劣化品) を使った。
なぜなら、使ったトリマコンデンサは現在廃品種になっているから。
-
修理
-
左の写真はトリマコンデンサ交換後で、赤〇で囲んだ部品です。
セラミック型 10pF に全数交換しました。
-
右の写真はこれまで実装されていた故障したトリマコンデンサです。
ハトメ部分が接触不良になるのです。

-
修理後の動作チェック
-
トリマコンデンサ交換後にトラッキング調整をして FM が [STEREO] 表示が出て良好に受信できることを確認しました。
-
半日程度ロングランしてバリバリ雑音が出ないことを確認しました。
修理前は1時間に数回発生していました。
リペア (その2):ハンダクラック予防補修
-
ハンダクラックしやすい箇所
-
左の写真のように [OUTPUT] [AM ANT] [FM ANT] 端子のリードは基板にハンダ付けされています。
-
これらのリードにはリアパネルと基板からの2方向からストレスを受けるので、ハンダクラックしやすいです。
-
右の写真のように放熱器が付いたパワートランジスタのリードは基板にハンダ付けされています。
-
自身の発熱がハンダに伝わるのでハンダが劣化し、ハンダクラックしやすいです。

-
予防補修
-
上で解説したハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで更に10年は大丈夫です。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
以下のように全て良好です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| チューナ基板 |
W305 (Q801-E) |
+30V |
+29.3V |
〇 |
VT 電源 |
| W116 (Q803-E) |
+12V |
+12.2V |
〇 |
チューナ電源 オーディオ電源 |
| W113 (Q808-E) |
-12V |
-13.0V |
〇 |
| W307 (Q805-E) |
+5V |
+5.22V |
〇 |
ロジック電源 |
| 電源基板 |
J705-3pin |
+5.6V |
+5.70V |
〇 |
MCU 電源 |
| J705-5pin |
-35V |
-34.4V |
〇 |
FL 電源 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので、トラッキング調整をやり直しました。
-
あちこち滅茶苦茶ズレていました。
とてもオークション記事にあるような調整をしたと思えません。
-
スレレオセパレーションは調整前に 20dB しかなく、調整後は100倍 (40dB) 以上良くなりました。
-
スレレオセパレーション調整ボリュームは L/R とも最大に回し切り状態でした。
普通では考えられません。
-
今回の再調整でやっと本来の性能に蘇ったということです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
61 |
dB |
| NARROW |
29 |
29 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.027 |
% |
| stereo |
0.030 |
% |
| NARROW |
mono |
0.051 |
% |
| stereo |
0.075 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-50 |
-47 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.04 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
-
AM 受信
-
[aiwa 製 AM ループアンテナ] で最高感度になるよう調整しました。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
本機は「今年の7月にメンテンス済品をオークションで購入した」とのことで楽勝かなと思っていました。
-
バリバリという雑音は出るらしいがこれさえ直せばイイのかなと。
-
ところが「トリマコンデンサが全部劣化している」「調整がグチャグチャ」と、トンデモナイ状態でした。
-
購入してまだ2ヶ月しか経っていないのに全部のトリマコンデンサが劣化することはないはず。
-
おそらく出品者は10年以上前にオークションで購入し、その時の出品記事をそのまま転記したのだと思います。
-
そして出品に際して同調点ズレやセパレーションなどの調整ポイントを適当に弄ったと思います。
-
雑音が出るので連絡しても何の返事もないそうです。
オークションには
悪質出品者
もいるので気を付けましょう。
-
今回全て修理&再調整して、やっと新品時の性能と音質に蘇ったので、ご安心ください。
-
FX-711 は Victor 最頂点のチューナ
-
5連バリキャップで高周波系の性能が良く、しかも音が良いです。
-
鳶のビクターが鷹の本機を生んだかのような奇跡の高性能チューナです。
-
SONY ST-S333ES シリーズを越えているかもしれない。
-
FM 受信
-
感度が良く、受信レベルが dB で表示でき、しかも正確です。
-
聴いた瞬間に高音質と判る良い音
、素敵です。
聴き惚れます。
-
PLL 検波らしい、スッキリした解像度感のある音です。
細かい音が綺麗に出る繊細な音です。
-
本機の FM 受信時 S メータの dB 表示はかなり正確です。
30~90dB の表示範囲は信じてよいです。
-
AM 受信
-
[aiwa 製 AM ループアンテナ] での感度はかなり高く、S/N も良いです。
音質は AM としては普通レベルです。
-
本機のような FM が超高音質のチューナで、ナロー音質の AM をわざわざ楽しむ人はいないと思う。