Victor FX-711 (12号機) が到着
2025年9月10日、静岡県島田市の T さんより、
Victor FX-711
の修理依頼品が到着しました。
感度が落ち込んで20年間もデッドストックだったチューナです。
さてさて、蘇るかな?
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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受信レベルが低いです。
(レベルメーター日本バラスト HLSD400 で確認)
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ローカル局で 90dB 以上あるはずですが 50dB~55dB 程度になってしまう。
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A 端子より B 端子の方が少し 5dB 程度レベルが高いです。
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DX 局受信が難しいので約20年間保管していました。
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短時間しか確認していませんがローカル局なら受信問題ありません。
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バックアップは1時間程度は問題ないことを確認していますが、可能であればスーパーキャパシタ交換お願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [10302615] で、電源コードの製造マーキングは [1988年] でした。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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全体的にかなり綺麗です。
天板にややスレがある程度です。
ワンオーナ品かな?
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく ON できました。
FL 表示管の輝度は新品同様です。
各種ボタンは正常に反応します。
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FM 受信
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かなり感度落ちしていますが、[STEREO] 表示が出て受信でき、音も出ます。
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[REC CAL] ボタンでテスト音が出ます。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されていなかったので、右の写真の [aiwa 製 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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このアンテナと FX-711 の相性は良かったです。
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S メータの dB 表示は正常そうで十分なレベルがあり、感度落ちはなさそうです。
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カバーを開けてチェック
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内部はは非常に綺麗です。
目視で問題がありそうな部品は見当たりません。
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使用 IC のロット番号よりも本機は [1988年製造品] とわかりました。
リペア (その1):FM で感度落ちしている
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調査と原因
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FM フロントエンドのトリマコンデンサを回してみると容量変化が不連続でした。
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原因はトリマコンデンサの劣化です。
全数の5個とも交換します。
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FX-711 に使っているトリマコンデンサは劣化しやすく、故障が散見されます。
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修理
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左の写真はトリマコンデンサ交換後で、赤〇で囲んだ部品です。
セラミック型 10pF に全数交換しました。
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右の写真はこれまで実装されていた故障したトリマコンデンサです。
ハトメ部分が接触不良になるのです。

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修理後の動作確認
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トリマコンデンサ交換後にトラッキング調整をして FM が感度よく受信できることを確認しました。
リペア (その2):電気二重層コンデンサ交換
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概要
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修理依頼者の希望により電気二重層コンデンサを交換します。
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本機は製造後37年経っているので、そろそろ寿命で交換したほうがよいです。
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修理
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電気二重層コンデンサを下のようにやや容量が大きいものと交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C703 |
0.047F/5.5V |
0.22F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は交換前で緑色の部品です。
右の写真は交換後で黒色の部品です。

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修理後の動作チェック
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ちゃんとプリセットが記憶できて、短時間ですが電源コードを抜いても記憶が消えないことを確認しました。
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電気二重層コンデンサの容量が 0.047F→0.22F と4.7倍になったので、従来より長時間バックアップできます。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真のように [OUTPUT] [AM ANT] [FM ANT] 端子のリードは基板にハンダ付けされています。
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これらのリードにはリアパネルと基板からの2方向からストレスを受けるので、ハンダクラックしやすいです。
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右の写真のように放熱器が付いたパワートランジスタのリードは基板にハンダ付けされています。
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自身の発熱がハンダに伝わるのでハンダが劣化し、ハンダクラックしやすいです。

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修理 (予防補修)
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[ANTENNA B] 端子のアース側がハンダクラックしていました!
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上で解説したハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで更に10年は大丈夫です。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように全て良好です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| チューナ基板 |
W305 (Q801-E) |
+30V |
+28.8V |
〇 |
VT 電源 |
| W116 (Q803-E) |
+12V |
+12.0V |
〇 |
チューナ電源 オーディオ電源 |
| W113 (Q808-E) |
-12V |
-12.8V |
〇 |
| W307 (Q805-E) |
+5V |
+5.07V |
〇 |
ロジック電源 |
| 電源基板 |
J705-3pin |
+5.6V |
+5.81V |
〇 |
MCU 電源 |
| J705-5pin |
-35V |
-34.8V |
〇 |
FL 電源 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので、トラッキング調整をやり直しました。
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本機は感度落ちしていた以外は問題なく、調整もあまりズレていませんでした。
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以下の優秀な性能に蘇りました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
64 |
dB |
| NARROW |
21 |
21 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0087 |
% |
| stereo |
0.045 |
% |
| NARROW |
mono |
0.11 |
% |
| stereo |
0.11 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-51 |
-50 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.11 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時はかなり感度落ちしていましたが、修理&再調整で新品時の性能に戻せてよかったです。
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再調整でステレオセパレーションも高調波歪率も良好になり、とても良い音になりました。
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ワイド FM 対応クリコン
を使ったワイド FM 受信も良好でした。
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FX-711 は Victor 最頂点のチューナ
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5連バリキャップで高周波系の性能が良く、しかも音が良いです。
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鳶のビクターが鷹の本機を生んだかのような奇跡の高性能チューナです。
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SONY ST-S333ES シリーズを越えているかもしれない。
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FM 受信
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感度が良く、受信レベルが dB で表示でき、しかも正確です。
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聴いた瞬間に高音質と判る良い音
、素敵です。
聴き惚れます。
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PLL 検波らしい、スッキリした解像度感のある音です。
細かい音が綺麗に出る繊細な音です。
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本機の FM 受信時 S メータの dB 表示はかなり正確です。
30~90dB の表示範囲は信じてよいです。
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AM 受信
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筆者手持ちの [AM ループアンテナ] での感度はかなり高く、S/N も良いです。
音質は AM としては普通レベルです。
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本機のような FM が超高音質のチューナで、ナロー音質の AM をわざわざ楽しむ人はいないと思う。