Victor FX-711 (13号機) が到着
2026年1月4日、岡山県井原市の A さんより、
Victor FX-711
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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2011年10月にハードオフのジャンクコーナーで購入しました。
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「ザー」という雑音しか出ませんでしたが、FM/AM のトリマコンデンサ交換したら受信できるようになりました。
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それから14年以上経っているので、部品交換や調整が必要な頃だと感じています。
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左右の音声セパレーションが下がっているように思います。
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AM 純正アンテナは持っていないので、同封の [SONY ST-SA5ES] 用のアンテナで調整お願いします。
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操作ボタンにシールを貼った所が、押しても反応しないです。
修理お願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [17201441] で、電源コードの製造マーキングより [1987年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] の代わりに [SONY ST-SA5ES AM ループアンテナ] が添付されていました。
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全体的には並みよりかなり劣る外観です。
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フロントパネルに汚れはありますが致命的な損傷はありません。
天板への折り返しエッジの5ヵ所に小さい線キズがあります。
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リアパネルに汚れはありますが致命的な損傷はありません。
端子類に白いサビが出ています。
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天板に汚れ・多数のスレ・塗装ハゲがあり状態が悪いです。
致命的なヘコミがないのが幸いです。
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底板は特に問題ありません。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく ON できました。
FL 表示管の輝度は新品同様です。
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全ての操作ボタンは「反応しない」「反応しにくい」です。
タクトスイッチ全数交換が必要な状態です。
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[REC CAL] ボタンで正常なテスト音が出ます。
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FM 受信
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特に問題なく [STEREO] 表示が出て良好に受信できました。
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受信できたので、現状の性能値を測定してみました。
ステレオセパレーションが落ち込んでいます。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
43 |
39 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.025 |
% |
| stereo |
0.044 |
% |
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AM 受信
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添付された AM ループアンテナを接続してチェックしました。
このアンテナと FX-711 の相性は良かったです。
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特に問題なく良好に受信できました。
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カバーを開けてチェック
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内部はは非常に綺麗です。
目視で問題がありそうな部品は見当たりません。
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以下のトリマコンデンサが交換されていましたが、ハンダ付けが稚拙です。
手直しが必要です。
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FM フロントエンドのトリマコンデンサ [TC101] [TC102] [TC103] [TC104] [TC105]
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AM フロントエンドのトリマコンデンサ [TC301] [TC302]
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[C703] 電気二重層コンデンサが交換されていました。
リペア (その1):操作ボタン用のタクトスイッチが全部劣化している
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概要
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FX-711 の操作は全て操作ボタンになります。
操作ボタンがちゃんと反応してくれないと困ることになります。
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本機においては全ての操作ボタンが劣化しており難ありです。
例えば [POWER] ボタンすら効かないことがあります。
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こうなると、まずは操作ボタンの修理が最優先になり、これが終わらないと試験や再調整もできないことになります。
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修理
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操作ボタンで基板上にあるタクトスイッチを ON/OFF する仕組みです。
全てのタクトスイッチを交換します。
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問題はタクトスイッチ×32個と膨大に使われていることです。
タクトスイッチ1個からは4本のリードが出ています。
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交換には 4×32個 = 128ヵ所 のハンダ付けを外す必要があり、多大な手間がかかります。
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適合するタクトスイッチは 6×6mm 角で、スイッチトップ高さが基板面から 9.5mm の製品です。
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左の写真はタクトスイッチを全数新品にした後の一部分です。
写真では新旧わかり辛いですが、とりあえず撮影。
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右の写真はこれまで基板に実装されていた劣化故障したタクトスイッチです。

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修理後の動作チェック
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新品交換したので当たり前ですが、各ボタンが気持ち良く一発で反応します。
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オリジナルのタクトスイッチより押し圧が少し高いものを使ったので、押すとパキッとした感触となりました。
リペア (その2):電気二重層コンデンサ交換
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概要
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電気二重層コンデンサをチェックすると、既に 0.1F/5.5V に交換されていました。
オリジナルは 0.047F/5.5V のはず。
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少し悩みましたが、修理依頼者のコメントより、少なくとも14年経過していると思われるので交換します。
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修理
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電気二重層コンデンサを下のようにやや容量が大きいものと交換しました。
| 部品番号 |
オリジナル |
前回交換 |
今回交換 |
備考 |
| C703 |
0.047F/5.5V |
0.1F/5.5V |
0.22F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は交換後で、赤〇で囲んだ部品が電気二重層コンデンサです。
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右の写真は基板に実装されていた「前回交換の電気二重層コンデンサ」です。

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修理後の動作チェック
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ちゃんとプリセットが記憶できて、短時間ですが電源コードを抜いても記憶が消えないことを確認しました。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真のように [OUTPUT] [AM ANT] [FM ANT] 端子のリードは基板にハンダ付けされています。
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これらのリードにはリアパネルと基板からの2方向からストレスを受けるので、ハンダクラックしやすいです。
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右の写真のように放熱器が付いたパワートランジスタのリードは基板にハンダ付けされています。
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自身の発熱がハンダに伝わるのでハンダが劣化し、ハンダクラックしやすいです。

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修理 (予防補修)
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上で解説したハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで更に10年は大丈夫です。
リペア (その4):その他
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交換された FM/AM トリマコンデンサのハンダ付けが稚拙
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合計7個あるトリマコンデンサのハンダ付けをやり直しました。
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RCA 端子に白いサビが出ている
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RCA 端子を基板から一旦取り外し、
ピカール液
を使ってマイクロ研磨してから戻しました。
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RCA 端子に少し輝きが戻りました。
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フロントパネル内側の清掃
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タクトスイッチ交換作業でフロントパネルを取り外したので、この時に内側を清掃しました。
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ディスプレイの透明板にスス状のゴミが付着していました。
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スス状のゴミを除去したらディスプレイのコントラストが少し上がりました。
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[フロントパネル] にキズ、[天板] に塗装ハゲがある
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フロントパネルのキズは黒のマジックペンで化粧して目立たなくなりました。
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天板のキズは黒のマジックペンで化粧して目立たなくなりました。
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変形は無いので、完璧に補修するなら塗装業者に再塗装してもらえば新品同様になると思います。
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黒のマジックペンでの化粧は使っていくうちに取れると思います。
その時は再化粧してください。
誰にでもできます。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように全て良好です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| チューナ基板 |
W305 (Q801-E) |
+30V |
+28.6V |
〇 |
VT 電源 |
| W116 (Q803-E) |
+12V |
+11.7V |
〇 |
チューナ電源 オーディオ電源 |
| W113 (Q808-E) |
-12V |
-12.7V |
〇 |
| W307 (Q805-E) |
+5V |
+5.17V |
〇 |
ロジック電源 |
| 電源基板 |
J705-3pin |
+5.6V |
+5.58V |
〇 |
MCU 電源 |
| J705-5pin |
-35V |
-34.3V |
〇 |
FL 電源 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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ステレオセパレーション以外に大きなズレはありませんでした。
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再調整で以下の優秀な性能が出ました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
66 |
dB |
| NARROW |
27 |
27 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.019 |
% |
| stereo |
0.028 |
% |
| NARROW |
mono |
0.19 |
% |
| stereo |
0.20 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-50 |
-50 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.07 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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添付された [SONY ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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本機は操作ボタンに使っているタクトスイッチが全て劣化していた以外に大きな問題はありませんでした。
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再調整でステレオセパレーションも高調波歪率も良好になり、とても良い音になりました。
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ワイド FM 対応クリコン
を使ったワイド FM 受信も良好でした。
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FX-711 は Victor 最頂点のチューナ
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5連バリキャップで高周波系の性能が良く、しかも音が良いです。
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鳶のビクターが鷹の本機を生んだかのような奇跡の高性能チューナです。
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SONY ST-S333ES シリーズを越えているかもしれない。
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FM 受信
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感度が良く、受信レベルが dB で表示でき、しかも正確です。
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聴いた瞬間に高音質と判る良い音
、素敵です。
聴き惚れます。
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PLL 検波らしい、スッキリした解像度感のある音です。
細かい音が綺麗に出る繊細な音です。
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本機の FM 受信時 S メータの dB 表示はかなり正確です。
30~90dB の表示範囲は信じてよいです。
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AM 受信
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感度はかなり高く、S/N も良いです。
音質は AM としては普通レベルです。
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本機のような FM が超高音質のチューナで、ナロー音質の AM をわざわざ楽しむ人はいないと思う。