KENWOOD KT-1100D

KENWOOD KT-1100D をゲット！

2006年8月14日、ヤフオクにて KENWOOD KT-1100D の不動作品を税込1,110円にて落札しました。 この写真は修理完了後です。

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程度＆動作チェック

1. 出品者のコメント
   
   
   • 下の写真の表示のまま、どのボタンを押しても反応しませんでした。 ジャンクとしての出品になります。
     
     
     
     
   • 中古品なので、多少のすれ、汚れ等はご容赦下さい。 経年の割には比較的良好かと思います。
     
     
2. 外観
   
   
   • 20年を経た製品としては、かなり程度が良く、多少のスレは許容範囲です。
     
     
   • 真正面から見るフロントパネル部分には、ほぼキズなし。 フロントパネルの折り曲げ部分には塗装ハゲがあります。
     
     
   • リアパネルはメチャ綺麗でキズはありません。
     
     
   • 天板にキズやサビはほぼありません。 底板に少し錆が出ているが酷くはないです。
     
     
3. 電源 ON して動作チェック
   
   
   • 電源は入りました。 フロントパネルの表示器は新品同様の明るさです。
     
     
   • 出品者コメントの [どのボタンを押しても反応しませんでした] の通りでした。
     
     

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カバーを開けてみました

1. 基板の作りが大変良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
   
   
   • [TUN 基板] に [IF 基板] [DET 基板] [DCC 基板] が垂直に取り付けられています。
     
     
     • この他に [METER 基板] [DISP 基板] などもあります。
       
       
   • 電源トランスは大きくて立派なものを使っています。
     
     
   • 以下の IC を使用して合理化が図られています
     
     

     メーカ	IC	機能
     SANYO	LA1231N	FM IF System
     	LA1245	AM Electronic Tuner
     	LA3350	PLL FM Stereo Multiplex Demodulator
     TOSHIBA	TC9147BP	Static FM/AM/LW 3 Bands Digital Tuning System
     	TD6104P	ECL Prescaller for FM

     
     
   • 使用 IC のロット番号から、本機は1986年製と判明しました。
     
     
2. FM フロントエンド
   
   
   • 5連バリキャップと [Dual MOS FET]×2個の以下の豪華な構成です。
     
     
   • コイルは全てコアタイプなので、調整し易いです。
     
     
     
     
3. FM IF 部
   
   
   • WIDE 時
     
     (FE)→[CF1]→[IC1]→ [L3] →[IC2]→ [L5] →[IC3]→[CF4]→[LA1231N]
     
     
   • NARROW 時
     
     (FE)→[CF1]→[IC1]→ [CF2] →[IC2]→ [CF3] →[IC3]→[CF4]→[LA1231N]
     
     
   • [LA1231N] で同調点検出します。
     
     
4. FM 検波部
   
   
   • PLL 検波で、フィードバック制御できる方式です。
     
     
   • PLL 検波は回路が複雑になりますが、音が良いです。
     
     
5. FM MPX 部
   
   
   • MPX は [LA3350] で 38kHz キャリアを抽出し、オペアンプで加減算して復調するセミディスクリート構成です。
     
     
6. AM 受信部
   
   
   • フロントエンドは2連バリキャップです。 [LA1245] で全てを構成します。
     
     
7. プリセットメモリのバックアップ
   
   
   • 18mF 5.5V の電気二重層コンデンサでバックアップします。
     
     

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リペア

1. 現象から考えて、MPU が動いていない
   
   
   • MPU は TOSHIBA TC9147BP という 42Pin の大きな LSI で、同調システムの全てを担っています。 この LSI の VDD (42pin)をテスターで当たると、1.35V しかありませんでした。 これじゃ、動作しないです。
     
     
     
     
   • 電源部を調べると、78M05 という3端子レギュレータICを使っています。 ここの出力で既に 1.85V しかないのです。
     
     
   • 電源部そのものには不具合ありませんでした。 そうすると、設計以上に電流が流れてしまっていることになります。
     
     
   • 調べて行くと、78M05 からの出力は3つのダイオードを介して各部へコントロール回路用電圧を供給しています。
     
     
     • D39 からは TC9147BP へ
       
       
     • D37 からは POWER MUTING 回路へ
       
       
     • D36 からはディスプレイ基板へ
       
       
   • D36 を取り外してみると、78M05 の出力電圧は 5.67V と正常になりました。 原因はディスプレイ基板です。
     
     
   • ディスプレイ基板に外部から+5.5Vを加圧してみると、突然、チューナーが動作するようになりました。
     
     
     • 元のように D36 を取り付けて再現試験してみましたが、もう正常に動作するようになってしまいました。
       
       
     • 各部電圧も正常値になり、もうどこも悪い所がありません。 真の原因が判らなくなりました。
       
       
     • おそらく電源に入れられた電解コンデンサの内部短絡だったと思っています。 このまま使って様子をみることにします。
       
       
2. クリーニング
   
   
   • フロントパネルの若干のキズは補修タッチペンで化粧して全く判らなくなりました。
     
     
   • F 端子、AM アンテナ端子、RCA 端子は錆取りクリーナーで軽くクリーニングして、ピカピカになりました。
     
     
   • 全体的なクリーニングをやって、かなりの輝きを取り戻しました。
     
     

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調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. 調整ポイント
   
   

   BAND	セクション	基板	種別	調整ポイント	調整内容
   FM	フロントエンド	TUN	L	L1 L4 L7 L18	RF トラッキング
   			L	L14	OSC トラッキング
   			TC	TC1
   			IFT	L10	IF
   	IF	IF	VR	VR1	AUTO STOP SENS
   	検波	DET	IFT	L9	同調点
   				L11	PLL 検波 波形
   				L12	PLL 検波 NULL
   	IF 歪補正	DCC	VR	VR3	DET
   				VR4	MONO2
   				VR5	ST-L
   				VR6	MONO3
   				VR7	SUB
   	MPX	TUN	VR	VR1	NARROW SEP
   				VR2	SEP-L
   				VR3	SEP-R
   				VR4	MPX VCO
   			L	L25	stereo 歪補正
   			LPF	L23	キャリアリークフィルタ
   AM	フロントエンド	TUN	L	L26	RF トラッキング
   			TC	TC2
   			L	L27	OSC トラッキング
   			TC	TC3
   	IF		IFT	L28	IF
   FM/AM	メータ	METER	VR	VR2	T-METER (OFFSET)
   				VR3	S-METER (LEVEL)
   				VR4	MODULATION (%)

   
   
2. テストポイント (TP)
   
   

   FM/AM	TP	接続先	内容	備考
   FM	TP10	TP10～TP11 間	同調 NULL	0±10mV
   	TP11
   	TP12	TP12～TP13 間	PLL 検波 NULL	0±10mV
   	TP13
   	[DET 基板] CN3-4pin	CN3-4pin～GND 間	FM S メータ電圧
   FM/AM	TP3	TP3～GND 間	VT 電圧	バリキャップ印加電圧

   
   
3. 電源電圧チェックポイント (VP)
   
   
   • すごく当たりにくい場所にあるので、電圧チェックはパスしました。 必要が生じてから測定すればイイかな。
     
     

   VP	表示電圧	標準電圧	実測電圧	判定
   Q40-E	+15V	+14.9V	*	*
   Q42-E	-14V	-13.5V	*	*
   IC14-OUT	+5V	+5.6V	*	*
   Q46-E	+28V	+28V	*	*

   
   
4. FM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	KT-1100D の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	SELECTOR : FM REC CAL. : OFF FM IF BAND : WIDE RF SELECTOR : DISTANCE	-	-
   2	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信	[DET 基板] L9	TP10～TP11 間電圧 = 0±10mV	同調点調整
   3	-	76MHz 受信	L14	TP7 電圧 = 3.0±0.1V	OSC トラッキング調整
   4	-	90MHz 受信	TC1	TP7 電圧 = 25.0±0.1V
   5	手順3と4を数回繰り返す
   6	83MHz 30dB 無変調	83MHz 受信	L1 L4 L7 L18	R67 (後) 電圧 = 最大 R67 は [DET 基板] の右側にある	RF トラッキング調整
   7			L10		IF 調整
   8	83MHz 90dB 無変調		[DET 基板] L11	[DET 基板] L11 の2次側波形 = 振幅最大 オシロスコープで観測	PLL 検波調整
   9			[DET 基板] L12	TP12～TP13 間電圧 = 0±10mV
   10	83MHz 12dB 無変調		[IF 基板] VR1	S メータ = 1ドット	AUTO STOP レベル調整
   11	83MHz 90dB mono 1kHz		[DCC 基板] VR3 VR4 VR6	オーディオ出力 = 高調波歪率最小	WIDE mono IF 歪補正
   12		83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	[DCC 基板] VR2		NARROW mono IF 歪補正
   13	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	VR4	TP14 周波数 = 19kHz±200Hz 周波数カウンタで測定	VCO 調整
   14	83MHz 90dB stereo 1kHz L-R		L25	オーディオ出力 = 最大	SUB レベル調整
   15			[DCC 基板] VR7	オーディオ出力 = 高調波歪率最小	WIDE stereo IF 歪補正
   16	83MHz 90dB stereo 1kHz L		[DCC 基板] VR5	オーディオ出力 (L) = 高調波歪率最小
   17	83MHz 90dB stereo 1kHz R		VR2	オーディオ出力 (L) = 最小	WIDE セパレーション調整
   18	83MHz 90dB stereo 1kHz L		VR3	オーディオ出力 (R) = 最小
   19	83MHz 90dB stereo 1kHz R/L	83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	VR1	オーディオ出力 (L/R) = 最小	NARROW セパレーション調整
   20	83MHz 50dB 無変調	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	[METER 基板] VR2	T メータ = センタ	T メータ調整
   21			[METER 基板] VR3	S メータ = フル	S メータ調整
   22	83MHz 90dB mono 400Hz		[METER 基板] VR4	MOD メータ = 100%	M メータ調整
   23	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R		L23 (前)	オーディオ出力 (L) = 19kHz 成分最小	キャリアリーク調整
   24			L23 (後)	オーディオ出力 (R) = 19kHz 成分最小

   
   
5. AM 受信部の調整
   
   
   • この調整は純正 AM ループアンテナを接続して行う必要があります。
     
     

   手順	SSG出力	KT-1100D の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	SELECTOR : AM REC CAL. : OFF AM IF BAND : WIDE	-	-
   2	-	522kHz 受信	L20	TP7 電圧 = 1.5±0.1V	OSC トラッキング調整
   3	-	1629kHz 受信	TC2	TP7 電圧 = 8.0±0.1V
   4	手順2と3を数回繰り返す
   5	603kHz 30dB 1kHz	603kHz 受信	L21	S メータ = 最大	RF トラッキング調整
   6	1404kHz 30dB 1kHz	1404kHz 受信	TC3
   7	手順5と6を数回繰り返す
   8	999kHz 30dB 1kHz	999kHz 受信	L22	S メータ = 最大	IF 調整

   
   
6. 再調整結果
   
   
   • FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。 優秀な数値です。
     
     

   項目	FM IF BAND	L	R	単位
   ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	72	71	dB
   	NARROW	60	61	dB
   パイロット信号キャリアリーク	WIDE	-55	-57	dB
   オーディオ出力レベル偏差 (mono)		0	+0.1	dB

   
   

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使ってみました

1. 感度が非常に良く、混変調妨害にも強く、 かなり優秀です。
   
   
   • この KT-1100D の性能より、KENWOOD の1980年代のチューナーは超優秀と思われます。
     
     
2. FM の音質はシャッキリとした高音域が特長
   
   
   • ハッとするような素晴らしくクリアな音 です。
     
     
   • シンバルの弾け散る余韻まで、繊細に表現します。 歪のない高域が綺麗で、低域も量感があります。
     
     
   • ソースの持つ質感や雰囲気をうまく表現します。 一皮剥けた素晴らしい臨場感です。
     
     
3. AM の音質も良い
   
   
   • [AM IF BAND] ボリュームにより、選択度を無段階に調整できるので、結果的に音質も調節できます。
     
     
   • 電波の強い放送局では [WIDE] にすれば高域がかなり出るようになります。
     
     
   
   
   
4. 放送局のプリセットメモリ数が FM/AM 合わせて16局分あるので、必要十分です。
   
   
5. S メータ表示のバーが9本
   
   
   • 左4本・中央1本・右4本で、それぞれ7段階表示です。
     
     
   • 左と右のバーは赤色で、中央は白色です。
     
     
   • チューニングツマミを右回転していくと、放送局が見つかったら、まず左バーが赤表示されます。
     
     
   • 更に右回転すると、左バー表示が消えて中央バーが白表示されます。 ここで周波数がピタリ合ったことになります。
     
     
   • 更に右回転すると、中央バー表示が消えて右バーが赤表示されます。
     
     
   • T メータのシミュレーションをやっているようです。
     
     
6. [MODULATION(%)] 表示
   
   
   • シグナル強度表示の下側にあり、変調度を表示してくれます。 ピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
     
     
7. FM アンテナ入力は F 型 75Ω不平衡コネクタなので、妨害電波の混入を避けることができます。
   
   
   
   
8. SONY ST-S333ESG と肩を並べる高性能
   
   
   • 質感と内部の作りは ST-S333ESG のほうが上です。
     
     
   • KT-1100D は5連バリキャップですが、ST-S333ESG は4連バリキャップです。
     
     
   • ST-S333ESG にはパイロット信号キャンセル回路がありますが、KT-1100D にはありません。
     
     
   • ですから甲乙付けがたいかと・・・
     
     

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操作方法について

1. プログラム受信のしかた
   
   
   • プログラムタイマーと KT-1100D を接続して電源を切る直前に受信していた局（LAST CH）とA側CH-8、B側CH-8の合計3局を受信することができます。 これは3局を留守録音するときに大変便利です。 FM、AM両局で可能です。
     
     
   • モード遷移図は右のようになります。 電源を入れる度に、モードは矢印の方向に1つ進みます。 一番最初は左端または右端のモードから始まります。
     
     
   • LAST CH がA側だった場合、プログラムタイマーよりの電源ONで左端からモードが開始されます。
     1. LAST CH（A側）を受信します。
     2. 次のプログラムタイマーよりの電源OFF→ONで、今度はA側CH-8を受信します。
     3. 次のプログラムタイマーよりの電源OFF→ONで、今度はB側CH-8を受信します。
     4. 2と3を繰り返します。
     
     
   • LAST CH がB側だった場合、プログラムタイマーよりの電源ONで右端からモードが開始されます。
     1. LAST CH（B側）を受信します。
     2. 次のプログラムタイマーよりの電源OFF→ONで、今度はB側CH-8を受信します。
     3. 次のプログラムタイマーよりの電源OFF→ONで、今度はA側CH-8を受信します。
     4. 2と3を繰り返します。
     
     
   • 以上のように、A側とB側のCH-8メモリは2局目以降のプログラム受信チャンネルとして使われます。
     
     
2. QUEITING CONTROL スライドボリューム
   
   
   • ステレオ放送の S/N 比改善のため、左右チャンネルのブレンド量をこのボリュームで調節します。 遠い局など S/N 比の悪い局を受信する場合は DISTANCE 側にすると S/N 比の良い状態で聴くことができます。 しかし、ステレオ感は悪くなります。 （左端では MONO 受信となります。）
     
     
   • 通常は NORMAL（右端）の位置で受信します。
     
     
3. AM IF BAND ボリューム
   
   
   • AM 放送を受信する際、復調帯域を広帯域（WIDE）から狭帯域（NARROW）まで連続的に可変できます。
     
     
   • WIDE
     混信のない地域での通常の位置です。 低歪で、より音質の良い放送を受信することができます。
     
     
   • NARROW
     プリエンファシスされた放送局を場合や、混信がある場合の位置です。 選択度特性が良くなり、混信のない受信ができます。
     
     

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レベルメータ

• FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。 1～5 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。
  
  
• これを見ると、S/N 良く受信するためには、フルレベルの必要があるようです。
  
  

  アンテナ入力 (dB)	1	2	3	4	5	6	7
  ～15	×	×	×	×	×	×	×
  16～30	○	×	×	×	×	×	×
  31～36	○	○	×	×	×	×	×
  37～42	○	○	○	×	×	×	×
  43～45	○	○	○	○	×	×	×
  46～49	○	○	○	○	○	×	×
  50～57	○	○	○	○	○	○	×
  58～	○	○	○	○	○	○	○

  
  

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仕様など

1. ドキュメント
   
   
   • KT-1100D 取扱説明書
     
     
   • KT-1100D Service Manual
     
     
   • KT-1100D カタログ
     
     
   • 1987年9月25日発行のカタログ
     
     
2. 仕様
   
   
   
   

   発売時期	1986年
   定価	74,800円

   
   

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