Marantz ST6000 (3号機) が到着
2025年10月13日、岡山県井原市の A さんから Marantz ST6000 の修理依頼品が到着しました。
今や黄昏の AM Stereo 対応チューナです。
それどころか2028年には現在の AM 放送がほぼ消滅します。
ワイド FM に移行します。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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5~6年前にハードオフで購入しました。
脚が無かったのでスポンジ円形ゴムを下面に4個貼って対処しています。
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周波数が、80.00MHz の放送が -0.02MHz 低い 79.98MHz で受信します。
80.00MHz ではステレオ表示が点きません。
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左右の音声セパレーションが下がっているように思います。
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他のチューナと比べて出力レベルが高いように思います。
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AM は [SONY ST-SA5ES の純正 AM ループアンテナ] で調整お願いします。
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フロント側の右上に地元地域の AM 周波数表が貼ってあり、このままにしておいてください。
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外観
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製造シリアル番号は [MZ009935000073] で、製造年シールより [1999年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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フロントパネルの正面は綺麗ですが、天板への折り返し部分に擦りキズや線キズが多いです。
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リアパネル自体は綺麗ですが、端子類に少しサビが出ています。
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天板には汚れと全体的に下側へのヘコミがあります。
おそらく上に重い機材を乗せていたのでしょう。
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底板は特に問題ありませんが、脚が別物に置き換わっています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ディスプレイはかなり痩せていますがなんとか見えます。
各ボタン操作は正常です。
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FM 受信
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特に周波数ズレは特に感じません。
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修理依頼者のコメントとは違うのですが、筆者の環境では電波レベルが強いからでしょう。
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S メータの dB 表示が (筆者の環境で) 63dB なので、感度落ちはなさそうです。
本機の dB 表示は 60dB 程度で飽和する。
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[TUNED] [STEREO] 表示が出て音も出て正常に受信できます。
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特に問題なさそうなので、現状のオーディオ性能を測定してみました。
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ステレオセパレーションの仕様は WIDE 時 [40dB] なので、それを超える性能が出ています。
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修理依頼者の言う「左右の音声セパレーションが下がっている」はなさそうです。
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高調波歪率の仕様は WIDE 時 [mono:0.1%] [stereo:0.2%] なので、それを超える性能が出ています。
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キャリアリークも左右の音量バランス (レベル偏差) も良好です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
44 |
46 |
dB |
| NARROW |
48 |
49 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.10 |
% |
| stereo |
0.11 |
% |
| NARROW |
mono |
0.15 |
% |
| stereo |
0.22 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-64 |
-65 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.12 |
dB |
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修理依頼者より「他のチューナと比べて出力レベルが高い」と言われています。
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そこで、
SONY ST-S333ESG (23号機)
と FM 受信での出力レベルを測定して比較検証してみました。
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結果、mono/stereo とも ST6000 は ST-S333ESG より 3.5dB (1.50倍) 出力レベルが高いとわかりました。
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ST-S333ESG の出力レベルは 750mV なので、ST6000 では 1125mV となります。
ST6000 の仕様書にはこの数値記載がないです。
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チューナの出力レベルの国際基準はないのでメーカによりバラバラです。
こういうものと思って使うしかないです。
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AM 受信
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以上より、仕様以上の性能が出ており問題ないので、メンテナンスは一般的な再調整だけで良さそうです。
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カバーを開けてチェック
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天板が変形しているため外し難かったですが、何とか外れました。
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本機は密閉構造に近いため、内部は非常に綺麗でした。
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基板を目視チェックして明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
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右の写真の黄〇のように [ANTENNA A] の GND リードと FM フロントエンドとのハンダ付けが外れています。
ここは手直し必要です。
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修理依頼者は「前オーナによる改造があるのではないか」と心配されていました。
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チェックしましたが、改造は無くオリジナル状態を保っています。
リペア (その1):[ANTENNA A] の GND リードのハンダ付けが外れている
再調整
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電圧チェックポイント (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| J226 (15V) |
+15V |
+15.1V |
〇 |
| J227 (5.6V) |
+5.6V |
+5.65V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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FM フロントエンドのトラッキング調整でほんの少し感度が上がりました。
調整ズレはほぼなし。
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同調点調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整により、ステレオセパレーションと高調波歪率が大きく改善し、優れた音質になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
50 |
48 |
dB |
| NARROW |
49 |
48 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.064 |
% |
| stereo |
0.076 |
% |
| NARROW |
mono |
0.11 |
% |
| stereo |
0.18 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-76 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.12 |
dB |
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AM 受信部
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SONY ST-SA5ES の純正 AM ループアンテナで調整しました。
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このアンテナで調整しても調整ズレはほぼありませんでした。
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純正アンテナではないので、最高感度が出ている保証はありません。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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性能的には特に大きな問題がない状態良好な個体でした。
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少しの修理と再調整で新品以上の性能に戻りました。
ディスプレイの輝度が劣化しているのが残念です。
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デザイン
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フロントパネルは分厚いシャンパンゴールドのアルミ材で豪華です。
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[DISPLAY] ボタンを押すと電波レベルを dB 表示するのがよいです。
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あまり正確ではありませんが、測定器のような精密さを感じます。
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プリセットメモリは FM/AM それぞれ30局分あります。
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FM アンテナ入力は F 端子なので妨害電波を拾いにくいです。
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FM の受信性能&音質
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このクラスとしてはキチンと製作されており、感度や妨害波排除能力は良いです。
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音はクォードラチュア検波特有の柔らかさの中にも解像度を感じる音質です。
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AM の受信性能&音質
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感度は普通です。
それほど良くはないです。
AM にしては音が良いと感じます。